布が出来上がるまでの工程に、縮絨という作業があります。
この辺りでは、伝統的な衣服にジャケットがあります。


このジャケットは、羊毛を紡いで織った後に、フェルト化をさせ、布の織り目を、ぎゅーっと詰まらせて、縮め、さらに、重りをかけて伸ばす。
という工程を最後にし、縫製します。
縮絨をかけることにより、水分をはじき、風を通さず、保温性があり、余計な蒸れは外に逃がす。という、もともと、ウール製品に備わっている機能を、より向上させることができます。
羊飼いの暮らしは、雨や雪の中でも、羊を追いかけ、ヒマラヤの高地を歩き続けるという過酷なもので、このジャケットは、羊飼いの家では、ユニフォームのように、妻やお母さんが織ってくれた、ジャケットを着ています。


今回、羊飼いの家のお母さんが、インドにいられない間、2枚の茶色のジャケット用の布を織りあげていてくれました。
そして、この縮絨と言う作業を、することになりました。

羊飼いのおじさんも、
いつもジャケットを着ています

縮絨ーーー2021、9月

まず作業に入る前に、この作業をできる人を探さなくてはいけませんでした。
縮絨は、なかなかの力仕事と、失敗したら、せっかくここまでの工程を経てきた布が、残念なことになってしまいますので、熟練の技が必要で、高齢化が進み、今までお願いしていた遠く離れた村のおばあちゃんにお願いできませんでした。
なかなかできる方が見つからず、近くの大きめの村へ行き、代々ジャケットの仕立てをしている方を訪ねてみました。
すると、ここから60km離れた街の工房で、機械でやってくれるんだよーと教えてくれました。


どうやら、この辺りでも、もう村では縮絨の作業はやっておらず、村で織って、街で機械で行っているようです。
街に行くと、専門店で、たくさんジャケットの布が売っているのを見ていて、なぜ、こんなに売るほど作れるのだろう?と思っていた理由の一つは、こういう細かい作業を機械で代替して、手紡ぎ手織りの布と売っているのだという事が分かりました。

まずは、お湯を沸かす薪。
これも、その家のおじさんが、山から集めてきてくれました。

そんな事を、自分の家の家主に話すと。。。
なんと、お母さんが教えてあげながら、一緒にやりましょう。ということになり、作業を始める所までこぎ着けました。

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たっぷりのお湯をを沸かし。

布にかけ、足で揉んでいきます。
ひたすら、熱いお湯をかけながら。アツアツの布を揉んでいきます。
織りあがったばかりの布は、着物の反物によく似ています。
長い布を、木の枝につかまって、バランスを取りながら、まわし捏ねるように。
3時間ほど、汗をかきながら、せっせと揉みます。

木の枝を折り、定規を作って、出来上がりのサイズを確認しています。
布の織り目が詰まって、見た目も質感も、どんどん変わっていきました。

揉み終わったら、水で洗い、反物を巻いた状態で、一晩、岩の上に置き、余計な水分を排水し。

翌日、もう一度、水で洗い。
物干しに布を掛け、下側を縫い付け筒にし、重りをかけ、乾かします。
2日その状態で干します。

布の裾を縫います
重しを乗せます。濡れている状態。
2日間、こうして、布を干しました。
それはそれは、優しい感じの伝わってくる、布になりました。

こうして、ジャケットの布として、やっと、縫製にかかることができます。

縮絨と言う作業、おばあさんが教えてあげるから、一緒にやろうと言ってくださり、周りに村の女の人達も集まって、
火を焚きながら、クラスを開いてくれました。

今回、教えてくださった、
カンバラナニ さんです。

縮絨という、ひとつの作業を通して、この土地の移り変わりが見えてきます。

そして、先進国もこうして、発展の途上で、衣食住のあらゆる部分を、早く、安く、機械で効率的に進むよう、少しずつ変わっていったのだろうな。

ここは、先進国の人が失ってしまった、知恵と暮らしが、まだ探せば残る場所。。。

そして、うつり変わっている最中の場所。

街に売っている、ローカルウールの布と、何かが違う気がする。。。

おばあちゃんの想いとか。。。羊飼いの家族の暮らしから、育まれてきたものだから。

やっぱり、柔らかくて、暖かそうです。

縮絨、作業の前。織り目に注目。
縮絨後。フェルト化されています。

ここまで、この布が完成するまでに、作業に関わってくださった方のご紹介。

羊飼い

羊飼いー Dolu Family

洗いーPabna

Pabnaの詳しい紹介ページhttps://bellaterrawool.com/%e3%81%bf%e3%82%93%e3%81%aa%e3%81%ae%e7%b4%b9%e4%bb%8b/%e3%83%92%e3%83%9e%e3%83%a9%e3%83%a4%e3%81%ae%e6%b0%91%e3%80%80pabna-%e3%81%95%e3%82%93/

紡ぎーKanbara Nani

カンバラナニの紹介ページhttps://bellaterrawool.com/%e3%81%bf%e3%82%93%e3%81%aa%e3%81%ae%e7%b4%b9%e4%bb%8b/kanbara-nani/

織りーmira

Miraの詳しい紹介ページhttps://bellaterrawool.com/%e3%81%bf%e3%82%93%e3%81%aa%e3%81%ae%e7%b4%b9%e4%bb%8b/%e3%83%92%e3%83%9e%e3%83%a9%e3%83%a4%e3%81%ae%e6%b0%91%e3%80%80mira%e3%80%80%e3%81%95%e3%82%93/

こうして、それぞれのパートを技を持った方たちが、担当してくださり、昔ながらの方法で製作が進んでいきます。

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