時は遡り2023年11月、10月初旬に航空便でインドから配送した荷物が日本に到着していないので、その時インドにいた私は何度も郵便局へ出向いていた。
オンラインの追跡で確認すると、インドの外国荷物カスタムOfficeという所で止まっているようだ。
全部で4箱荷物が届いていない。
それはいつも頭のどこかで不安材料として、チラチラと影を落としていた。


2023年11月22日
日本へのフライトのため空港のある大都市デリーへ山から降りてきて、そこで輸送会社を営んでいる知人にオンライン上のレコードを見せた。
「Umi.これはまずい。今すぐ国際郵便センターへ行くべきだ」
画面を見た彼が言った。
日本行きの飛行機に搭乗するため、1時間後に空港へ向かわなければ行けない時間だった。
詳しい状況を聞き一旦パニックになる思考を何とか黙らせて、冷静にほかの解決策を相談する。
輸送代行業者を営む彼は、政府郵便局にも知人がいるから自分が出向いて賄賂を払えば、荷物はきっと配送出来ると言う。
金額20000円。
それがインド。インドはまだまだそういう国だし賄賂で何とかできる。という知人がいるだけありがたい。と素直に思った。
一旦部屋に戻って落ち着きたい。と一言声をかけ、10分間外の喧騒から離れ冷静に冷静にと自分に問いかける。
急いでATMへ向かい20000円分のインド紙幣を握りしめ輸送代行業者へ向かった。
予定時間より送れて空港へ向かうタクシーに乗り込む。
「日本へ向かうんだけど、トラブルがあって時間に遅れてるんだ。急いでくれないかな!」
ヒンディー語で言うと、運転手はニヤッと笑い。任せろよ!と言いイケイケなドライブで空港へ向かい車を走らせる。
他の車に罵声を浴びせながら、とにかく急いでくれる運転手。
空港に着くと50kgもある私の手荷物を、手早くカートに載せ「気をつけて日本に行っ来てね。さあ。早く行くんだ!」と、30秒前まで他の車に怒鳴りまくっていたとは思えぬ笑顔で送り出してくれる。
この運転手も輸送代行業者も、イギリス騎士の様でも日本の侍のようでもないけど、インド映画の俳優のようにカッコよく役に入り私の冒険の物語に参加してきてくれる。

2023年12月28日
そんな光景を思い出しながら、羽田発インドデリー行きの飛行機に乗っている。

壮絶な緊張感に負けぬよう、必死で歯を食いしばった12月。
自主企画のリトリート、展示会初回、
展示会への緊張から解放された途端、頭の中の片隅でいつも声を上げていた、「荷物が止まっているよ」と言う声が大きくなる。
目を背ける訳にはいかない。
賄賂で何とかなると言っていた彼は、展示会最中の怒涛のさなか、何度もトライしたけど本人じゃなくてはダメみたいだ。と連絡をくれていた。
オンライン上で確認し現状が変わっていない。国際郵便オフィスに電話をし、emailもし、何とかやれる事をやったけどどうにもならなかった。
BellaTerraは1月は展示会2箇所、2月は京都で1ヶ月の継続展示。更には、古代織の再現プロジェクトという大きな企画を控えている。
明らかに物量が足りない。
12月22日の夜中。時計の針が23日になった頃航空券の予約サイトを眺め、非常に高額な年末年始の航空券を、少しでも安価である日にちを探しネットサーフィンしていた。
過去最高額な航空券の値段が並ぶ画面を前にし、どうしたらいいのか判断出来ずにいた。
クリスマスの前の賑わいも静まり冬の独特の静寂に包まれる深夜、余計なものを持たないと決めている殺風景な部屋に暖房の音だけが響いていた。
展示会やイベントで笑っている自分。その姿は、ほんの一瞬の刹那であって、インドと日本のあいだを渡り作品を発表し人様の前に立たせて頂くという姿の裏には、隣にいて言葉を交わす相手もなく、喜び、困難、悲愴、幸福起こる事象の決断を淡々と進め、その先に待っている実労も責任も自分で行うという覚悟の連続の日々を何年もこなしてきた。
圧倒的な孤独を味わったクリスマスイブ、部屋の祭壇にはいつも火が灯っている。
ヒマラヤでの1人暮らしの中、習慣的にShivajiに話しかける、日本では狂人とも言える、ヒマラヤでは当たり前に癖で、祭壇のShiva 神に話しかけていた。
私の中で答えは出ていた。だけど怖気付いて受け入れられず、一生懸命思考で自分を苦しめていた現実を、共に受け入れてくれた気がした。
ヒマラヤの村の人達なら
「恐れなくていい。出ていった分のお金は神様が何とかしてくれる。神と共にクリエイトした、いい事をしてるんだ大丈夫。神様はいつも一緒。私達は神様の一部として日々生きている。だから心配はいらない。」と言うだろう。
神への祈りを重ねるうち、思考が作り出す恐れがなくなっていく。
深夜に高額航空券を買い、翌朝、葉山での1dayポップアップとイベントへ向かった。
朝の国道134号線を、箱根方面から湘南を抜け葉山までドライブした。
相模湾の凪の海面に、朝日がキラキラ反射し輝いていた。
全てが予定通りに行っている訳では無いけど、幼い頃から見てきたその光景に無条件の感動と喜びに包まれ無いわけがなかった。
皆様の協力や応援のおかげで、葉山での1dayイベントを終えた夕方には、セーター、ベストなど大物は完売となった。
神棚にShiva ji は、いつものように座っていた。

今、デリーへ向かう飛行機の中でこの文章を書いている。
お隣の席には、福島さんという80代の男性と娘さんが居て、福島さんと戦争の時の田舎暮らしのお話や、習っているというYOGAの話をしている。
いくつになっても少年のような行動力と勇気を持ち、嬉しそうな笑顔でお話してくれる福島さんとは、意気投合し生の素晴らしさや、足るを知り幸福に生きる。そんな話題で大いに盛り上がり何時間も話し続けてしまった。
機内食も福島さん親子と団欒しながら頂き、仕事をしようとラップトップの電源を入れるが動かなかった。
前前日、電源が入らなくなり急いで電気屋さんのトラブルセンターに持っていき修復したように思えたが、機内で
再び起動しなくなってしまった。

インドでの暮らしの中で、全てが計画通りに進むなんて考えもしなくなり、起こった物事に、ただ、一つ一つベストを尽くし生きることしかできないと知った。
計画通りに進まぬ日々だけど、朝起きると幸せだし、機内食は美味しいし、福島さんみたいなお爺さんとの笑顔弾む会話は、幸せそのものでしかない。
だからインド人は言う「No problem」
「この世には問題自体が存在しない。」と。。。
たった1週間インドへ。
12月の日本での時間を経て、2024年1.2月に迎える大きな挑戦へ向け、ひとつながりの事象だと捉えている。
「インドには呼ばれた人しか行けない」と言うけれど、航空券の値段なんて関係なく「インドに呼ばれたら行かなきゃならない」もあるようだ。

「年末年始は山のお家に帰ってくるよ」
電話越しに聞こえるパパの声は、かつてないほど嬉しそうだった。

I'm comimg home...
パパ。Umiが帰るよ......

つづく。。。

2023年12月28日 羽田→デリー 機内にて


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いつも応援してくださる皆様。
本当にありがとうございます。

全ての存在がMayaから解放され、安寧の中にありますように
愛と感謝と祈りを込めて

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“日用美 販売展示会”  神奈川 二宮
2024/1/14(日)15(月)16(火) 11:00-17:00
→この日のためにインドから取り返す可愛いお洋服達。新作達を必ず取り返して展示したいと思っています。
沢山の作家達を大きな優しさでサポートする浅川あやさんと、あやさんの愛のたっぷりつまった中世の小さな教会のような自給自足的美しい暮らしを営むギャラリーで、木の葉の絨毯や風になびく枯れ草を眺めながら。
きっと。きっと。最高に感動的な展示会にしたい。どうかインド国際郵便よ頼みます。

“agréable*musée  アグレアブル・ミュゼ”  東京国立
2024/1/19.20.21(金)(土)(日)
11:00~17:00 販売展示会
1/21(日) 逆瀬川了∞MutsumiUmi 祈りの音と映像イベント
→2023年3月から、アグレさんとISUZUとBellaTerraのお洋服コラボするんだって決めて、ここの日のために今までにないパターンにも挑戦したんだ。必ず荷物を持ち帰って最高に可愛い、Agreablemusse.妙華さん∞ISUZU.美香さん∞BellaTerra.MutsumiUmiの超絶可愛いを発表したい♡

“Tamisa 松井山手” 京都
2月1日(木) 1dayイベント
→コロナでロックダウンで閉じ込められていたNepalでInstagramでフォローしていた、Mayaちゃん。Kitohanaの花ちゃんの計らいで遂に逢えたのはこの12月。逢えたことが魂の約束だったかのように嬉しくて、時間や年月という尺度を超えた様な愛おしく濃密な初対面から、この日、京都にお招きいただきます。
MutsumiUmi 京都初イベント♡

“Millet”  京都 静原
2月 常設展示販売  2月3.4日在廊
2月3日(土) MutsumiUmiによる“音と映像で感じるヒマラヤ山岳遊牧民”開催
→こちらもKitohanaの花ちゃんの閃から頂いたご縁。京都静原の Milletにて常設展示を。Milletと店主の樹里ちゃん。深い深い静寂と安寧が溢れるアーティストが生み出した美しすぎる空間。料理の素材も見た目も味も、コースで出される魂のかけらのひと皿ひと皿のタイミングすらも全てが樹里ちゃんの慈しみと愛に溢れていた。
空間を満たす音楽、薪ストーブの煙の香り、窓の外の景色、、食器の手触りも、あの空間の振動が今も私の中に響いている。
大きな愛情と慈しみを、引き算で余裕を生み出す空間でホールドしている樹里ちゃんに惚れています。

“Rera Utari” 山梨 上野原 
2024年1~2月 古代織の再現プロジェクト
2月10日(土) 堀田義樹∞MutsumiUmi Kirtan,音&映像
2月12日(日) 糸紡ぎ&カカオセレモニー1dayリトリート
→ヒマラヤから毎月オンラインで糸紡ぎクラスを続けている、私にとっては拠点のように大切に育んでいるスペース ReraUtari。 こちらのイベントは私の主催。自己投入予算は35万円。
MutsumiUmi 渾身のプロジェクトの始まり。今は多くは語れない。お楽しみに

2月中旬 インドに帰国予定。
愛∞感謝∞祈

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